海洋ゴミ問題ってなに?

海洋ゴミ問題ってなに?

 海洋ゴミ問題は非常に深刻だ。

 環境問題の中でも、あまり人々に詳しく認知されていない問題の一つがこの海洋ゴミ問題だ。

 海にはプラスチックゴミが溢れ、海洋生物や海鳥たちがプラスチックゴミを誤飲して、亡くなったとされる事例がこれまでにも数えきれないほど報告されている。プラスチックゴミによって窒息したり傷を負ったりする海洋哺乳類は、毎年10万頭に上ると推定されている。海鳥の90%がプラスチックを摂取しているという研究結果も出ている。

 今こうしている間にも、海の生物たちは傷ついているのだ。

 私たちは、そうとも知らず、毎日たくさんのプラスチックを使い、捨てて、知らず知らずのうちに海を汚している。

これは決して他人事ではない。私たち一人一人の問題だ。

 この記事では、海洋ゴミ問題の全体像を説明していく。

プラスチック消費の激増によるCO₂と海洋ゴミの激増

 プラスチックを使う量は世界中で増え続け、製造と焼却にたくさんの石油を使い、たくさんの温室効果ガスを排出し、地球温暖化の一因となっている。こういった人間の活動によって引き起こしている地球温暖化の進行が、多くの生物を、そして我々人間自身の生存をも窮地に立たせている。

 そして、

 プラスチック消費の増大に伴って、海洋ゴミ問題は、年々深刻さを増している。

 人間が使用したプラスチックのうち、適切に処分されなかったゴミが、川などを経由して海に流れ出しているのだ。年を追うごとに海へ流出するプラスチックゴミの量はとんでもない勢いで増え続けている。それによってさらに多くの生物たちを我々は傷つけている。

 海洋に流れ出したプラスチックゴミは太陽の熱や波によって分解され、マイクロプラスチックになる。世界の海の奥底には、数えきれないほどのマイクロプラスチックが溜まっているという。その結果、最近では深海生物からもマイクロプラスチックが検出されるようになった。マイクロプラスチックは海洋生物の体内に蓄積され、食物連鎖で結果的に人間の体内に入ってくる。

プラスチックは世界を変えた

 プラスチックの使用について語る前に、プラスチックがこの世界にもたらした大きな利について、確認しておこう。

 実は、プラスチックは発明されてからまだ100年くらいしか経っていない。

 プラスチックが実用的に使われるようになったのは、第二次世界大戦以降のことだ。第二次世界大戦で、鉄や金属が軍事目的に徴収され、値段が高騰した。それに伴ってプラスチックの需要が伸び、技術開発が進み、大戦後の世界を支えるまでに大きく成長した。

 1950年以降、現在までの約70年で、プラスチックの年間生産量は200倍以上に激増し、2015年には3億8,100万トンものプラスチックが生産された。これは全人類の質量とほぼ同じとも言われる。

 プラスチックは非常に安価で、衛生的であり、柔軟性もあり、なおかつ丈夫で長持ちする。

 プラスチックのおかげで可能になったことはたくさんある。飛行機が空を飛べるようになったし、宇宙に人を送ることもできるようになったし、食品も長持ちさせてロスを無くして、より広い範囲へと食の繋がりが生まれた。

 私たちの生活は、たくさんのところでプラスチックに支えられている。プラスチックがなければ、ほとんどの人類の生活が成り立たないのだ。まずはそのことを理解しておかなければいけない。

プラスチック消費の激増に処分インフラが追いついてない!

 プラスチックは生産され、使用され、捨てられると、処分しなければいけない。

 しかし、処分する過程で、ポイ捨てされたり、不法投棄されたり、適切に処分されなかったゴミが、川などを辿って海へと流れ出す。

 2010年には、世界全体で、年間約2億7000万トンのプラスチックが生産され、年間約2億7500万トンのプラスチックゴミが出た。そのうち、沿岸地域(海岸線から50㎞圏内)で発生したプラスチックゴミは約9950万トンあり、そのうち、適切に管理されなかったプラスチックゴミは約3190万トンで、そのうちの約800万トンが海へと流れ出している。

 これが2010年の試算データであるため、最近では、その1.5倍(1200万トン)近くのプラスチックゴミが毎年海へと流れ出しているかもしれない。

 このままのペースで増え続ければ、2050年には海の中は魚よりもゴミの方が多くなると言われている。

 我々の食べる魚のお腹からマイクロプラスチックが出てくるのが「普通」になってしまうかもしれない。

海洋ゴミの出所と素材の内訳

 海洋ゴミの内訳としては、2割が海で発生した漁具などのゴミで、8割が陸から来たゴミだ。

 世界のプラスチック生産の産業部門ごとの内訳としては、包装が圧倒的で、その次に建築建設、その次がアパレル、と続いている。一方、世界のプラスチック廃棄物の産業部門ごとの内訳としては、包装がその寿命の短さからさらに抜きんでており、数秒で使い捨てられる包装プラスチックがプラスチックゴミの大半を占めているのだ。いかに包装プラスチックが環境に悪いかがよく分かる。必要不可欠ではない包装を一人一人が意識して控えなければいけない。ビニール袋は非常に便利なので、環境に良いビニール袋を選択することや、しっかりと適切に処分することも大切にしていかなければいけないだろう。

 どこの地域がたくさん海洋ゴミを流出させてしまっているのだろうか?

 実は、2015年の段階では「東アジア・太平洋」地域からの流出だけで60%を占めている。南アジアが11%、サハラ以南南アフリカが8.9%、中東北アフリカが8.3%と続いている。

大量消費国と大量流出国

 プラスチックを大量に消費しているのは、先進国と呼ばれる国が多く、アメリカやドイツが代表的で、日本も代表的なプラスチック大量消費国の一つだ。お菓子を買って袋の中にさらにたくさんの袋で個分けにされているのはもう日常的で、違和感すら感じない人が多い、もはやそんな状態だ。

 一方、プラスチックをたくさん海に流出させてしまっている国は、大量消費国ではないことが多い。これはとても不思議なことだと感じないだろうか?

 中国やインドを含め、「途上国」と呼ばれるような国では、ゴミ処理インフラが整っていないことが多い。そういった国で適切に管理されなかった大量のゴミたちが海へと流れ出しているのだ。

 今後、中国やインドを含め「途上国」と呼ばれる国々がさらに経済成長を続ければ、それらの地域からのゴミの流出は増えていくだろうと予想されている。

 「先進国は大量のプラスチックを消費しているけれど、海に流出させていないので、海洋ゴミ問題には関与していないのではないか?問題は“途上国”にあるのではないか?」と思うかもしれない。しかし、実は、問題はもっと根深い。

 ご存じだろうか?

 実は、大量消費国の先進国の多くが、自国で処理しきれないゴミを、途上国へと輸出しているのだ。ゴミの流出量世界第一位の中国に、84万トンものゴミを輸出していた(2016年)のは、そう、紛れもない日本だ。途上国のゴミ問題は、実は先進国に大きく起因しているという事実も忘れてはいけないのだ。

 しかし、中国は2017年からプラスチックゴミの輸入規制を開始し、その他の東南アジアの国々も次々に規制を設け始めている。輸出先を失った先進国の多くの国々では、輸出できなくなって行き場を失った大量のゴミたちが海岸線に積み上げられているという。

 このように、海洋ゴミ問題はとても複雑である。

 我々は、子供たちやそのまた子供たちの未来に豊かな海を残すために、今すぐに、こういった事実を真剣に受け止め、危機感を持ち、国境を越えて、手を取り合って、一人一人が意識を変えたり、声をあげ始めなければいけない。

 今後、さらに「海洋ゴミ問題」は世界中の大きな大きな共通問題となっていくだろう。

参考サイト
(1)Our World in Data: Plastic Pollution https://ourworldindata.org/plastic-pollution#all-charts-preview
(2) Center for International Environmental Law: Plastic & Climate: The Hidden Costs of a Plastic Planet https://www.ciel.org/plasticandclimate/
(3)日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部中国北アジア課: 中国における外国ごみの輸入禁止と
固形廃棄物輸入管理制度改革に関するレポートhttps://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/0a81da1f65d47788/20190001.pdf
(4)National Geographic: 各記事 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/